現在の成熟した日本の社会だからこそ、様々な地域の特性が顕在化し、本当の意味で豊かな状況が生み出せるのではないだろうか。グローバルな社会を俯瞰しながらそれぞれの地域にある価値に気づける豊かな心が、今問われている。
私の活動拠点である広島県福山市で2011年よりはじまった商店街再生まちづくりプロジェクト。疲弊している商店街アーケードの環境を再生していこうと、商店街組合だけでなく福山市の行政も巻き込みながら最終フェーズを迎えようとしている。ハードを整備すれば何かが変わるという幻想を抱かず、ひとりひとりの街を思う気持ちと行動が持続可能な状況を生み出すことを互いに思考し続けていかなければならない。また、この商店街に関連し「福山本通船町ビルプロジェクト」の仕事を自ら生み出し、人を巻き込みながら街の賑わいの創出に関わっていこうと現在、奮闘している。藤井厚二の建物を活かして新たにコンバージョンした、個人の別邸である「後山山荘」も竣工から1年、多くの方々の協力を経て後山山荘倶楽部を発足し、月1回の一般公開に漕ぎ着けた。80年前からの環境を再生した取組みを広く知って頂き、持続可能な建築=環境を残していくことに積極的に関わっている。
今後、このような建築をつくることと同時に竣工後も中長期で人・街に関わっていく一朝一夕ではない取組みが必要になってくると思う。地域で活動する建築家の新たな役割であり、その人と人との関わりの中に次代へつなげていくバトンがあると信じている。