明治初期に建てられた町家茶屋様式の建築を鰻屋としてコンバージョンする計画である。敷地は古くから花街として栄えてきた京都祇園新橋通に位置し伝統的建築物が建ち並ぶ統一感のある町並みを形成していた。建物は１つの置屋に２棟が連なり北面が新橋通、南面が白川筋に接道している。正面となる北面から奥へ進むと２つの中庭が残存し、内部は当時の姿がそのまま残っていた。しかし調査を進めると多くの柱・梁が朽ちており大規模な構造補強と合わせ計画を進めた。具体的には長きにわたる時間を経た素材が感じられる木組みを基調に坪庭・座敷の空間構成を踏襲した客席と合わせて飲食店としての必要機能を整理している。また、北面は当時の姿を残しつつ南面には新たに露地・川床のような客席を設けることで建物に２つの表情をもたせた。「デザインするのではなく時間というものをカタチにする」ことで、歴史ある京町家を活かしつつ、先人たちがかつて眺めていた祇園の情景とともに鰻を食する新たな茶屋を目指した。
