築50年以上が経過し建物の老朽化や高齢化が進む県営住宅の住環境改善を図った建て替え計画である。高齢者から子育て世帯まで幅広い年齢層が暮らす住宅やマンション、商業施設が建ち並ぶ広島市内の住宅街にある敷地に対して、コミュニティの中心となる中庭=パティオと、それらを取り囲むように分棟配置した住棟を考えた。
パティオはベンチや築山、木陰など幾つかの要素を配置し、利用者それぞれが居場所を見つけ、憩うことができるものとして考えた。住棟は周辺環境と分断してしまう大きな建物ではなく、住棟間の抜けをつくる分棟配置と高さを抑えたボリューム計画によって、まちと調和し日常に溶け込む新たなスカイライン描くとともに敷地内の空気循環と各住戸へ良好な通風・採光の確保を目指した。周辺に開かれたパティオでは子供たちの遊ぶ声がこだまし、それを談笑しながら見つめる大人たちといった世代と世帯を超えたコミュニティの姿を創造した。