敷地は入江の眺望と潮風が抜ける心地よい環境である。計画にあたり水面や大空が広がる豊かなロケーションを最大限に活かすことを考えた。反面、台風時は床下浸水など災害時の状況などを踏まえながら、水辺を感じる床レヴェルを設定した。大潮の満潮時の災害を考えて高床式の形状としながら平屋部分の壁はRC造、屋根と2階部分は鉄骨造とした。敷地西面にある実家との境にある庭を活かす形でボリュームをL字型に配置し、北面の前面道路から2階部分を南側庭越しにセットバックさせた。前面道路に対しては少し閉じたファサードとしながらも庭とリビングの関係性を確保しながら南側に開く形式としている。また、南面の入江から庭へ抜ける風の流れや水辺と身体との関係性を意識した構成にしている。RCの構造壁以外は開口部とし日本建築の持つ「軒」や「縁側」のような要素を取り込むことによって水平方向の広がりを与えると同時に内外を曖昧にし、水辺と住空間が一体となりうる環境を獲得している。
この住宅では1日のうちで2mもの潮位の変化など雨・風・光が水面と関わる中で非常に豊かな表情を与えてくれる。この環境が変化する「時間」を出来るだけ生活空間の中に純粋に取り込める住宅を目指した。