これは“三つの芸術の教え”を大切にされている滋賀に本部を持つ神慈秀明会の福山支部建替えプロジェクトである。敷地は福山市内東部の山裾に位置し、周辺環境が自然豊かな緑に包まれた環境であった。この豊かな場所が持つ日常に隠れた自然の美しさを享受しながら祈りの空間にふさわしい環境を創出したいと考えた。
要望としては御神殿を中心として各諸室及びラウンジ・ロビー・多目的室など多くの方たちが集える場が求められた。そこで建築を東西に延びるリニアな配置とし南面の山を背景に北面の裾野へ向けて開く計画とした。
具体的には採光を考慮しながらひとつのボリュームを2棟に分節し、東棟は御神殿を中心とした諸室、また西棟はラウンジやロビーなどメインエントランスとしての機能を配している。それらをランドスケープと丘の上にたなびく一朶の浮遊する帯壁によって機能的な接続や半外部空間による周辺環境との緩やかな連続性を生み出したいと考えた。
帯壁の上部では御神床を頂点とし、背後の山の稜線に沿ったような形状によって内部空間の広がりをつくり出している。このひとつながりのアルミリブパネルによる形態はお祈りに訪れる人にとって心の拠り所となるアイコンを意図した。
この自然に抱かれた建築は四季を通じて人々にそっと寄り添い、刻々と変化する希望の光を照らしてくれるだろう。